mise en abyme

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昨日家に帰ると、ポストに郵便物が入っていた。注文していた書籍が届いたようだ。

ルシアン・デーレンバック(ドイツ語ならデーレンバッハかな)『Le récit spéculaire: essai sur la mise en abyme』の英訳。

この人なんかドイツ人ぽい名前なんだけど、イタリアのジェノバ大学でフランス近代文学を教えてるそうです。

本書の内容は批評用語「mise en abyme」についての研究書。

この用語はたいていの場合、「合わせ鏡の入れ子構造」の事を指していて、たとえば登場人物が作者の投影として表現されているなど、いくつか例がある。

映画では、タルコフスキーの『ノスタルギア』にこの表現方法が指摘されている。

ただ、デーレンバックはこの用語がかなり多様な使われ方をして錯綜しているために、その出自と使用法を再度検討する必要がある、と述べている。本書執筆の動機がこれだ。

本書の面白いところは、この構造を単なる批評用語としてだけでなく、美術作品の表現にもそれを確認しているところだろう。

「mise en abyme」は、アンドレ・ジッドが1891年ごろ発見したというが、ジッドがそれを説明しているのは、16世紀のクエンティン・マサイスという画家の作品に描かれた凸型の鏡について。この本の表紙はそのマサイスの作品を載せている。

デーレンバックはこの他、ファン・エイクの婚礼の作品に描かれた鏡や、ベラスケスの《ラス・メニーナス》の鏡に言及しながら、この用語の構造を分析している。

非常に面白そうな本です。落ち着いたら熟読してみたい。

追記: 後で調べてみたら、なんか邦訳されているみたいです。ありな書房から『鏡の物語』として。がーん。
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by jaro050 | 2004-11-23 18:02 | 美術寸評
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