怪獣使いと少年

幼い頃、私はウルトラマンの再放送を見たいがために毎週朝5時に起きてテレビにかじりついていた時期があった。ハマると生活をそれ一色にしてしまう癖が昔からあったけれど、ウルトラマンはこの癖がついたきっかけだったように思う。

「帰ってきたウルトラマン」、私が最初に見たウルトラマンは、初代ではなく、セブンでもなく、「帰マン」だった。再来した怪獣ブームを期に制作された第二期ウルトラマンシリーズの最初の作品だったが、物語は第一期に比べて人間がテーマとなっていて、制作当時のリアルな状況を少なからず反映していたようだ。

工場建設が進む時代に「自然の怒り」の象徴として登場する怪獣たち。ウルトラ警備隊、通称「MAT」は国連の一組織で、日本支部のメンバーの多くは旧日本軍の軍人たちという設定。今ならそれだけでもかなり問題になるだろう。実際MATは日本政府からその存在を疑問視され、怪獣退治に失敗するたびに「解散」をほのめかされていた。(この作品が制作されたのは1971年。学生闘争が収束していく過程であることは今では印象的に映る)

もちろん私はそんなことは気にもとめないで、ただ怪獣とウルトラマンの戦いをまるで水戸黄門の印籠のように待ち望んでいたのだが。

最近この「帰ってきたウルトラマン」、特に「怪獣使いと少年」という話が私の周りで話題に上って、懐かしさからDVDを借りて見てみることにした。過去の思い出とは裏腹に、こんなにエグイ表現もするのか、と驚いてしまった。それはこの第33話がとりわけ問題作だったからかもしれない。俗に「11月の傑作群」と呼ばれる31話から34話までの4話は、ストーリー、映像ともに「ウルトラ」のファンたちに注目されていたらしい。

ではなぜ問題作とされたのか。それは被差別部落や身障者を迫害してしまう人間模様を、宇宙人や怪獣といった「部外者」にからめて物語を作り上げているからだ。



この「怪獣使いと少年」の話をおって説明していこう。

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良という名の少年は、大雨が降りしきる中で一人、巨大な怪獣から逃げ惑っていた。その時彼を助けたのは、異様に膨らんだ頭部をもつ宇宙人だった。宇宙人は念動力で怪獣を地底深くに封印してしまう。

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とある工場のそばの空き地でのこと。廃墟に住む少年は、無心で穴を掘り続けている。

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この街では少年は「宇宙人」と呼ばれ忌み嫌われていた。学ラン姿の悪ガキたちが度々現れては、良少年を取り囲み、乱暴を繰り返している。

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その暴力に少年はじっと耐えているのだが、住処である廃墟には誰一人として入れようとしない。それでも強引に入ろうとすると、何らかの超常現象が起きて彼らを追い払ってしまう。そんなことが何度も起こるので、次第に街の人々は少年を恐れ、彼は「宇宙人」ではないかと口々に噂をしていたのだった。

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MATの隊員である郷秀樹は少年と「宇宙人」の噂を調査するためにこの地にやってきた。悪ガキたちを追い払い、少年に穴を掘る理由を尋ねるが彼は警戒して話そうとしない。とはいえ別れ際に少年はいじめから救ってもらった礼を言い、自分は人間で、北海道出身であることは告げる。さっそく郷は北海道へ調査に向かう。

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調査を終えた郷は事の次第を伊吹隊長に報告する。
「少年の名前は佐久間良。昭和33年4月5日生まれ。父徳三母よねの長男として江差に生まれる。昭和38年鉱山閉鎖とともに徳三は国を出て、出稼ぎにいったまま蒸発。昭和40年よね死亡。その直後良行方不明。父親を慕って東京に出てきたんでしょうね」

伊吹隊長「天涯孤独になった良君は、どれだけ父を憎み、また慕ったことか。郷、確か君も…。」 

郷「はい。でも、私にはMATという家があり、隊長という父がいます。」 

伊吹隊長「日本人は美しい花を作る手を持ちながら、一旦その手に刃を持つと、どれほど残酷きわまりない行動をすることか。郷、良君に関しては君に任せる。早く、宇宙人説から開放してやりたまえ。」 

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廃線になった線路を通って少年はパンを買いに出かける。

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街では相変わらず少年を気味悪がり、パン屋もまた面倒に巻き込まれたくないがために少年を追い払ってしまう。この街では少年は完全にのけ者だった。

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ただ一人、パン屋の娘を除いては。彼女はこれが仕事だからと、少年に一斤のパンを売ってあげた。

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廃墟に戻ると、そこには郷の姿が。郷は少年が老人をかくまうために廃墟に人をいれず、そして老人がメイツ星人であることをすでに知っていた(地球では「金山」と名乗っている)。その上で、少年が穴を掘る理由を尋ねた。

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老人が語り始める。「あれは一年前の雨の強い日だった。私は地球の風土・気候を調べるため川原に着陸した。その地球人の少年は恐怖と飢えと寒さのため死に掛かっていた。それ以来私と良は親子のように暮らした。私はこのまま地球に住んでもいいとさえ思うようになった。だが私の肉体は汚れた空気のため蝕まれて朽ち果てていく」
「早くしないと、おじさんは死んでしまうんだ」
「わかった。宇宙船をあの一帯に隠したんですね。」

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良と郷が一緒に穴を掘っていると、街の人々が武器を持って押し寄せてきた。MATが得体の知れない宇宙人を退治するどころか肩入れするなら、自分たちで排除しよう、そう彼らは考えたのだ。

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少年を取り押さえる人々。郷の静止にも拘らず、まるで恐怖に駆られるように人々は激情している。

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その光景を眺める老人。

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人々は少年をどこかへ連れて行こうとする。

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そのとき老人が表に飛び出してきた。。「待ってくれ。宇宙人は私だ!その子は私を守ってくれただけなんだ。」

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老人に抱きつく少年。しかし・・・

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「みんな!こいつを生かしておくと何をしでかすかわからないぞ!」

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民衆が老人に襲い掛かり、もみ合いになる中で、警官は銃を発砲してしまう。

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崩れ落ちる老人。体からは緑色に変色した血液が流れ出る。

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そのとき白い噴煙を上げて封印されていた怪獣ムルチが姿を現した。

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「マット。早く怪獣を退治してくれ」人々は叫び、逃げ惑う。

(勝手なことを言うな。怪獣をおびきだしたのはあんたたちじゃないか。まるで金山さんの怒りが乗り移ったかのようだ。)そう郷は心の中でつぶやく。

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ウルトラマンに変身する気力もなく、ただうなだれるしかない郷。帰ってきたウルトラマンは、ウルトラシリーズの中で唯一変身アイテムを持たず、郷とウルトラマンがシンクロしたとき、もしくは極限状態に陥ったときのみ変身できるのである。

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そこへ虚無僧が現れる。「街が大変なことになっているんだぞ。わからんのか。」
郷は思い直す。この虚無僧は、実は伊吹隊長なのだ(なぜ虚無僧!?)。

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ウルトラマンに変身する郷。

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格闘の末、ウルトラマンはスペシウム光線でムルチを倒す。

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一人取り残された良少年は、宇宙船を掘り出すためにただ黙々と穴を掘り続けていた。「おじさんは死んだんじゃない。メイツ星に帰ったんだ。おじさん、俺が着いたら迎えてくれよ。きっとだよ」

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「いったい、いつまで掘り続ける気だろう」

「宇宙船を見つけるまでやめないだろうな。彼は地球にさよならを言いたいんだ」

(終)
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by jaro050 | 2005-05-08 14:40
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