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1889――時代の交錯

ヒトラーとチャップリンが同じ年に生まれた、という事実は結構知られている。二人の人生を比較したときには、必ずといっていいほど登場する。

たいてい同じ年の出生を指摘したところでなんら二人には関係ないことだし、「同世代」ということだけを踏まえれば済む話である。過剰に憶測を飛ばす巷の「与太話」の域を出ない。

だがこれにハイデガーも付け加えると、何か意味ありげな色を帯びてくる。少し前までハイデガーのナチス加担が問題となっていたからだ。さらにこの1889年という年が第四回万国博覧会の開催、エッフェル塔完成、第二インターナショナル結成、東の方では大日本帝国憲法発布と重なると、もうなんだか無視できなくなってくる。

確かに1889年は「豊作」の年だったことは事実かもしれない。列記するだけでも、20世紀を代表する(してしまう)人々が名を連ねている。

1月4日   夢野久作(作家)
1月18日  石原莞爾(軍人)
2月18日  奥村土牛(画家)
3月1日   岡本 かの子(作家)
3月1日   和辻哲郎(哲学者)
3月7日   堤 康次郎(西武グループ創設者)
3月21日  柳 宗悦(思想家)
4月14日  アーノルド=ジョセフ=トインビー (歴史学者)
4月16日  チャールズ=チャップリン(俳優)
4月20日  アドルフ=ヒトラー(政治家)
4月26日  ルートヴィッヒ=ウィトゲンシュタイン(哲学者)
7月5日   ジャン=コクトー(詩人・劇作家)
8月1日   室生 犀星(詩人)
9月23日  ウォルター=リップマン(政治評論家)
9月26日  マルティン=ハイデガー(哲学者)
11月20日  エドウィン=ハッブル(天文学者)

1889年、激動の世紀末。この時代の変遷を示す年に、やがて20世紀の動向を担う人々を輩出した。そういった意味で、魅惑に満ちた年である。

(ちなみにアニメ『不思議の海のナディア』はこの年のパリから始まります。)
by jaro050 | 2005-05-12 22:30 | 歴史
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