カリブのオレンジ

以下の四つの写真、どのような構造になっているからわかります?

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四つの角度から写真を撮っています。部屋の内部を、柱などの基礎部分は残して切断しています。

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これがどんな風になっているかというと、下のプランを見てみると、球体に切断しているのがわかります。いやぁ劇的に面白い。

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ゴードン・マッタ=クラークの《サーカス――カリブのオレンジ》という作品(1978)。マッタ=クラークは、アメリカやヨーロッパ各地の建築物を切断することで一躍有名になった作家です。

壁を取り払うことで、労働者とオーナーが顔を突き合わせて仕事をする。また、住宅ならば切断することで居住空間に切れ目を入れ、それが壁に取り囲まれた空間であることを再認識させる。そんな形で、マッタ=クラークは「住む」という当たり前になっている行為を問題化しています。その作品内部にひとたび入れば、そこは居住空間であると同時に、その空間を作り上げているものが実は異質な「構造」であることもまた、意識されるという二重性を持っています。

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マッタ=クラークの作品を見ていて、思い出したことがあります。それは私が今住んでいるアパートに越してきたときのこと。そこは3階の角部屋で、二面が大きな窓ガラスになっているために、最初はなんだか高い場所に来てしまったような、そんな不安を感じました。だけどひとたび家具や荷物といった慣れ親しんだものを配置すると、そこは居住空間に一変したんです。そうすると、不思議なことにもう不安などたいして感じなくなっていました。「居住空間」という特殊な空間が発生すると、人は高い木の上でさえ落ち着く場所になるんです。

確か建築家の伊藤豊雄が大学の授業で出した課題の話をしていたんですが、それは日常で使う家具をいくつか用いて、建築という構造なしに居住空間を作り出すというものでした。これが結構難しいらしく、学生たちはかなり悩んでいたようです。伊藤豊雄はこのとき「皮膜としての建築」のようなものを考えていたようですが、その困難さもまた彼にはわかっていたようでした。そのことを、学生に伝えたかったのだとも思います。

マッタ=クラークは、そうした必要不可欠な構造をあえてむき出しにすることで、建築と「住む」という行為はどのように繋がっているのかを考えさせてくれます。
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by jaro050 | 2005-05-14 22:18
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