回文は存在しない?

「竹やぶ焼けた」「倉田はいつも、つい働く」・・・
これらの文章は、はじめから読んでも後ろから読んでも同じ音になります。これを「回文(かいぶん)」と呼びます。英語では「palindrome」と書きますが、回文は言葉遊びとして様々な国で取りあげられています。例えば英語の回文で言えば
「Madam, I'm Adam.(奥さん、私はアダムです。)」など、文字があれば大抵の言語で作ることができます。意外にも数字でも回文が成立します(例えば「1249779421」)。

しかし、普通に受け入れられて作られている回文ですが、実は「回文」はそもそも存在しないと言う人たちがいます。



彼らの論拠は、回文がシンメトリーの構造を持っていることに拠っています。言語は時間軸状で生起しますが、回文はそれをよみあげ、記憶を振り返ることではじめて認識されるため、回文は成立しないと言うのです。たとえば「かじか」という言葉を読み上げてみましょう。言語は順番に「か」の次に「じ」が読み上げられますが、次に何が来るかはこの瞬間では分かりません。「だ」(火事だ)かもしれませんし、「る」(かじる)かもしれません。そのためにこのときは回文は成立していません。回文は中心をなす語を頂点としてシンメトリーの山を登って降りる線グラフを想像すると分かりやすいかもしれません。そして全て読み上げられた後、ある予見をもとに逆に読み上げて、はじめてそれが回文だと気づくことになります。例えば次のような回文を見てみましょう。

まだ恋し仲は遠のきて、消えた言葉と答え、汽笛の音は哀しいこだま…

この散文詩を一目見たときには、全く回文であるとは気がつきません。しかしこれをひらがなになおして逆から読み上げてみると、同じことであることが分かります。

まだこいしなかはとおのきてきえたこととこたえきてきのおとはかなしいこだま

シンメトリーとは、一見の元で瞬時に対象であることが分かる図像のことをいい、それは空間上でのみ認識できるものです。時間軸上で生起する回文はそもそもシンメトリーを形成することができず、ただの反復でしかないことになります。「かじか、かじか、かじか・・・」という風に。ただここで「ではシンメトリーの文字で作られた回文があるのではないか」という反論が出るかもしれません。たとえば伊井さんの場合、英語にすると「II」となります。これは図像上でもシンメトリーで、初めからでも逆でも同じになります。しかしここでは図像が言語と分離しているということに問題があります。エクリチュールがパロールと違うように、いくら図像上でシンメトリーが成立したとしても、時間軸上で「いい」を認識しなければ、回文は成立しないのです。

私はこれに今のところ反論するすべがありません。いずれ明確な反論が出ることを望むばかりです。最後に、異様に長い回文を紹介してこの話を終わりたいと思います。くそう、反論したいなぁ。


噛んで「イテッ!」リップ。ねじ切る蔓,不吉垂れ込めるカビ,黒く実る怪しい端の実…。やはり、この七人投げられ、私ら刀抱え、この泥沼や、エルフの手で雫を。血だから、かな り胸に痛み、飛び退く。いざトンネル通過だ。霞かかる道よ。だけど頑健、この具合が彼怪し。もう勇者が来て、戦さが止まるめど,行く末,未定。歩き続けた旅。悪との戦い長引くだけ。「彼等メシアが来て、何とか助けたい、あの娘や叔母」と泣け、私,女子ら悲し。武器鋼鉄。トラップ!悔し、命縮む。死にかけたシ−フだけが斧も盗った。悔し涙。一喝。父母ホテルへ住み込み、掛かり切り。絆、戒めた。しかし、外野はすったもんだ。行き過ぎてる世話。あいにく捨てゼリフやけくそ「古しへよりの言い伝え、疑心暗鬼」と。スペル唱え威迫。扉無くす彼、菱形の中に馴染み箱を。ひたすら兄貴揺れ、行路禁じる。行き交うも音断った樹の気。『秋はとんぼ。洞穴は魚。金のうろこ飛ぶ。似たり寄ったりオカリナ』と、いつかのお伽噺の、見たか不思議な箱。こんな誘なう夜、男の子を抱かす所の、この意外さ。田舎だが、し、しかし、あなたっ、まごつくハ−レムの地だ。手がむやみやたら買うとか。血潮鳴り「矢弾だ!」妻殺しの士、暴君。敵、かたくなに舞い、ものものしい。なにはともあれ座り、やっと昼飯。石碑。肘鉄か?多湿、先手のドロ水。矢飛びて −】ここで半分。バテここで一休み。【ロトの伝説従って、地響きせしめる。一つやり忘れ、あー、元は担いしの物も今に無く、高き天空《星の城》】困った。またやり直し。地下道からだ。闇やムカデ達の群れは……くっ、困ったなぁ。しかし仕方がない。再開。【のこのこと姿を。この期通るような災難。ここは、亡きシ−フ形見の品、萩と斧が対となり、薫りたつより。谷懐。うー、のんきな風花……あら?ほ、ほんと!?萩、秋の樹だったと思うが……。消ゆる蜃気楼。これ、雪にあらず。旅を拒みし何かなのだが…?痺れが!すぐ並び、毒ハイエナ。取るペスト菌。暗示消えた。つい祈り、呼べ、死に急ぐ。蹴破り背ですぐに居合わせる敵。隙、油断も断つ。素早いが、しかしダメ−ジ。マイナスぎりぎり。屈み込み、スペルでほぼ復活、痛み無し。役立つ友のお陰だ。武士だけが滲む血。父の医師、薬物ら取って、動き封じながら、子、治した訳などは親子の愛だ。「消す!」だが、どんな敵か?あ、締められかけた首がないか?ただの毒浴びただけ。突っ切る相手見えず、食い止める魔道が作為的か。野獣?もしや、あれが害悪の根源か?解けた!予知みる鏡、姿が映る。粘土細工の人みたいに、眠りながら形を崩して…。手の震え止まぬ。ロトの声が彼方からした。『我ら下男に致死。残りは闇の支配者あるのみ』黒く光る眼。「これだ!」突き振る剣。「死ね!」】−−プツリッ −−「停電か……」
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by jaro050 | 2004-10-21 00:01 | その他
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