台詞の読み方

帽子
               西条八十

母さん、僕のあの帽子どうしたでしょうね
ええ、夏、碓氷峠から霧積へ行くみちで
渓谷へ落としたあの麦藁帽子ですよ

母さん、あれは好きな帽子でしたよ
僕はあのとき、ずいぶんくやしかった
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから

母さん、ほんとにあの帽子
どうなったでしょう
今夜あたりは、あの渓谷に
静かに雪が降りつもっているでしょう

数ヶ月前に、森村誠一の『人間の証明』が再びドラマ化されていた。私も途中から見ていたが、最近になってふと西条八十の詩を口に出して詠んでみたくなった。

渓谷から落下する麦藁帽子はくるくると回りながら小さくなっていく。そんなことを思いながら「母さん、」と一言。しかしなかなか思うような抑揚がでない。面と向かって呼びかけるわけでもなく、今はなき帽子に思いをはせながら、漏れるようにでた「母さん」がでない。

続いて「僕のあの帽子、どうしたでしょうね」という言葉。「どうした」という言葉の抑揚が難しい。ちょっとでも高いと語調が強くなり、逆に低すぎるとただの独白になってしまう。この「どうした」を生かすのが直前の「帽子」からの間(ま)。どれくらい長く取ればいいのか、着地点にいつも失敗するように思う。

何でこんなことにこだわっているのか自分でも分からないが、西条八十の詩はなんとしても声に出して詠みたいと思わせるものがある。さて、何故だろう、こんな夜更けに。
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by jaro050 | 2004-10-31 04:42 | その他
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