<   2004年 10月 ( 17 )   > この月の画像一覧

台詞の読み方

帽子
               西条八十

母さん、僕のあの帽子どうしたでしょうね
ええ、夏、碓氷峠から霧積へ行くみちで
渓谷へ落としたあの麦藁帽子ですよ

母さん、あれは好きな帽子でしたよ
僕はあのとき、ずいぶんくやしかった
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから

母さん、ほんとにあの帽子
どうなったでしょう
今夜あたりは、あの渓谷に
静かに雪が降りつもっているでしょう

数ヶ月前に、森村誠一の『人間の証明』が再びドラマ化されていた。私も途中から見ていたが、最近になってふと西条八十の詩を口に出して詠んでみたくなった。

渓谷から落下する麦藁帽子はくるくると回りながら小さくなっていく。そんなことを思いながら「母さん、」と一言。しかしなかなか思うような抑揚がでない。面と向かって呼びかけるわけでもなく、今はなき帽子に思いをはせながら、漏れるようにでた「母さん」がでない。

続いて「僕のあの帽子、どうしたでしょうね」という言葉。「どうした」という言葉の抑揚が難しい。ちょっとでも高いと語調が強くなり、逆に低すぎるとただの独白になってしまう。この「どうした」を生かすのが直前の「帽子」からの間(ま)。どれくらい長く取ればいいのか、着地点にいつも失敗するように思う。

何でこんなことにこだわっているのか自分でも分からないが、西条八十の詩はなんとしても声に出して詠みたいと思わせるものがある。さて、何故だろう、こんな夜更けに。
[PR]
by jaro050 | 2004-10-31 04:42 | その他

パソコン買い替え

b0041761_225416.jpgこのブログに移行する直前にパソコンが壊れていたので、先日ようやく買い換えることができました。NEC LavieのLR500/ADにしました。重さが2.1キロと軽いのが魅力的。CPUは256メガを付け足して512メガに増設。これで画像処理も少しは楽になるか。

パソコンのついでにプリンターも買いました。もうすでに6年近く使っていたので、買い替え時かと。いろいろ悩んだ挙句、複合機を初めて購入。決め手はコピー機能がほしかったから。ただ、難点は大きさ。店員さんが箱を持ってきたときはぎょっとした。でけぇ・・・。持ち帰るのにわざわざキャスターを購入してしまったほどです。それでももって帰るのは厳しかった。だって一人乗りのエスカレーターにつかえてしまうんですよ。結局抱きかかえて乗りました。重い!でも試してみたら性能よい!なによりコピーできるのがうれしい。
b0041761_22542542.jpg
[PR]
by jaro050 | 2004-10-30 23:07 | その他

視覚の装置

ドナルド・ジャッドの作品は鉄の箱でできている。普通この立方体を見る限りでは、いったい何が起こっているのか見当もつかない。その様相を記述してみるだけでも混乱振りが明らかとなる。壁に等間隔に配置され、ぴかぴかに磨かれた中空状態の鉄の箱・・・。何かを象徴しているようにも見えないし、作家の手跡のようなものも見当たらない。ジャッドはプランだけを作って実際の製作は職人に作らせるという、いわゆる「発注芸術」を実践したということだから、象徴も作家性もあるはずがないのも当然だ。
b0041761_043031.jpg

じゃあいったい何がしたかったのか?ジャッドの作る立体作品は彼自身「スペシフィック・オブジェクツ」と呼び、絵画でも彫刻でもない特殊な物体として提示されている。結論を先取りするならば、空間、色、奥行きというまさしく絵画の原理の為の実験なのだ。ジャッドは「スペシフィック・オブジェクツ」という論文で以下のように言っていた。「新しい作品(ジャッドの作品)は絵画に似ているというよりもずっと彫刻に似ているが、しかしそれはより絵画に近いのである」。ではどのように絵画に近いのだろうか。

続きを読む
[PR]
by jaro050 | 2004-10-29 02:58 | 美術寸評

自由に泳ぎまわる人:ヴォルフガング・ティルマンス

b0041761_16543343.jpg
「ティルマンスっておしゃれだよね」。ある知り合いがそういった。たしかにおしゃれかもしれない。彼の写真には性的なものがあふれているのに、ドロドロとしたものは感じられないからだ。身の回りの風景を撮っているのもその理由のひとつだが、質的に『relax』に載ってもおかしくないような「緩さ(ゆるさ)」がある。

これに拍車をかけているのは音楽との関連だろう。彼はテクノに関心を示し、ビデオ・インスタレーションではクラブの照明に焦点を当てて、テクノ・ミュージックにのせてランダムに動く反射鏡の様子を撮り続けている。そんな彼が注目されだしたのは90年代に入ってからで、彼の写真が掲載されたのは大半が音楽雑誌だった。今回の個展でも、掲載されているのは美術雑誌や写真雑誌だけではなく、タワーレコードのフリーペーパーなどにもティルマンスの名前が躍っている。

続きを読む
[PR]
by jaro050 | 2004-10-25 17:00 | 展覧会報

都現美のピカソ展

b0041761_5444442.jpg展覧会の無料チケットをもらったこともあって、都営新宿線の菊川駅から歩いて10分少々、結構長い道のりを経て東京都現代美術館へ向かいました。今回のピカソ展は1920年代半ばから30年代後半にかけて、シュルレアリスムと関わりあう時代を特集していますが、なかなか楽しめる内容でした。

続きを読む
[PR]
by jaro050 | 2004-10-25 07:20 | 展覧会報

回文は存在しない?

「竹やぶ焼けた」「倉田はいつも、つい働く」・・・
これらの文章は、はじめから読んでも後ろから読んでも同じ音になります。これを「回文(かいぶん)」と呼びます。英語では「palindrome」と書きますが、回文は言葉遊びとして様々な国で取りあげられています。例えば英語の回文で言えば
「Madam, I'm Adam.(奥さん、私はアダムです。)」など、文字があれば大抵の言語で作ることができます。意外にも数字でも回文が成立します(例えば「1249779421」)。

しかし、普通に受け入れられて作られている回文ですが、実は「回文」はそもそも存在しないと言う人たちがいます。

続きを読む
[PR]
by jaro050 | 2004-10-21 00:01 | その他

色彩の詩的言語

b0041761_2321643.jpg多木浩二のバーネット・ニューマン論『神話なき世界の芸術家』を読みました。この本で一貫しているのは、彼がユダヤ人であるという理由からカバラ思想と結びつける論や(彼がつけるタイトルはしばしばユダヤやキリスト教の用語が用いられる)、リオタールが議論していた垂直線の「ZIP」によるサブライム(崇高)論をある程度退け、ニューマンが時代精神(ツァイトガイスト)に導かれながら、悲劇的世界をいかに絵画に固有な強度で超えるのかという課題を、最終的には「詩的言語」という創造性の領域で解釈していることです。それ故立場的にグリーンバーグやローゼンバーグを支持しながらもそれを補足するような観がありました。

b0041761_2328176.jpg確かにニューマンの絵画には分析するだけの要素が少なく、多くの人はそのタイトルから推測するしかなかったとは思いますが、宗教的要素やサブライムを強調することはすでに絵画を論じることから離れてしまっていて、それ以上ニューマンを論じる必要がなくなってしまう印象は受けます。そのような議論が導くのは、アーサー・C・ダントの「誰かが描いた赤く塗られたキャンバスとどこが違うのか」という意見(おそらくこの意見は川村記念美術館にある《アンナの光》を想定していると思われます)にあるように、すでに問題は哲学に引き継がれたとする「芸術の終焉」に向かってしまうように思います。

多木氏の論には概ね賛成なのですが、後半部分で論じられる、色彩がもたらす強度の分析が比較的弱かったように感じます。この点をさらに深化していれば、よりニューマンの実験の意義が明確になったのではないかと思いました。
[PR]
by jaro050 | 2004-10-18 23:30 | 美術寸評

管理された偶然性?

b0041761_1658644.jpg『色彩構成』と一緒に届いたのがピエール・ブーレーズの『プリ・スロン・プリ』。ジョン・ケージの<偶然性の音楽>に触発されて作曲した全五楽章からなる作品です。「マラルメの肖像」という副題が示すように、象徴派の詩人ステファヌ・マラルメへのオマージュになっているという。さて、どんなものかと再生してみると、開口一発、大音響が鳴り響いてちょっとたじろぐ。ケージに対抗して「管理された偶然性」を意図していたというのは、オーケストラ曲という性格から分からないではない。まず指揮者がいること自体が音を管理している様が浮かんでくる。音楽に関しては門外漢なのでここまでしか言えませんが、とにかく聴き込んでみます。ある友人は「つまらない曲だ」とか言ってましたが、けっこう楽しめそうな予感。
[PR]
by jaro050 | 2004-10-17 17:13 | その他

色彩構成

b0041761_16274346.jpg注文していたジョセフ・アルバースの『色彩構成』が届きました。
バウハウスで活躍したこのアーティストが学生のために出版した色彩学習書の廉価版の訳本で、原題は「Interaction of Color(色彩の相互作用)」。

もともとは重さ22ポンド、価格が200ドルした代物らしいです。単位の変換表を見てみると、1キロ=2.2ポンドとなってます・・・ということは22ポンド=10キロ!?10キロの本ってなんだ?!この廉価版の訳本には図版が表紙をあわせて10枚載っていますが、原典は150枚入っていたというから相当なもの。200ドルなら2万以上(当時ならもっとするのか?)なので、学生には到底買える代物ではない。そりゃ廉価版出ますよ。というわけでさらっと読んでみます。文章は100頁もないので。

ところでこの書籍が出版されているのはダヴィッド社というところ。どうも聞き覚えがあるなと思ったら、以前買った『新版写真技術ハンドブック』の出版社でした。けっこう専門的な内容なので(それとも私が専門外だったからか)かなり格闘した記憶があります。この出版社、潰れないといいなぁ。
[PR]
by jaro050 | 2004-10-17 16:49 | 美術寸評

金沢21世紀美術館

b0041761_582992.jpgとうとう金沢21世紀美術館がオープンしました。私は行かなかったのですが、後輩は遠方まで列車に乗って(4時間半!)行ったそうです。たいへんだ。

妹島和世の建築はそれはみごとだったらしく、私の先生は「世界でも有数の美術館だろう」と絶賛してました。とはいえこの人けっこう「絶賛好き」な人なので実際見てみないと分からないのですが、話によると「あまりにもよい建築なので、展示されている作品を殺してしまうのでは」だそうです。少々皮肉がこもってます。

HPなどで作品を見る限りだと、なかなかよい作品を集めているのはわかります。後輩に展示に関してきいてみると、「今注目されている作家の作品をまんべんなく集めている観があって、キュレーションのコンセプトが見えない」とのこと。なかなか的確な答えでした。ただ、現況から言えばコンセプトを打ち出せるほどのまとまりを現代作家の作品で作ることは至難の業なのでは、と言うのが私の意見です。国際展による「現在の状況を示す」手法が広がっているのもそうした理由だと思います。まあ開館記念展なので国際展風になるのは仕方がないとは思いますが。所蔵作品をいかに見せるか、今後の展覧会に期待です。
[PR]
by jaro050 | 2004-10-17 05:22 | 展覧会報